BANANA NEWS 2025.7 vol.224 共創から生まれる未来

夏の日盛りに木陰の恋しい季節となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。BANANA NEWS vol.224です!今号では、9月7日に開催される、横浜イノベーション推進機構との共催イベントについて特集します。
横浜イノベーション推進機構 × バナナ園グループ
~サーキュラーエコノミーplusが拓く、ケアと文化とまちづくりの新たなかたち~
共創から生まれる未来
2025年9月7日、バナナ園グループと横浜イノベーション推進機構が共催するイベント「共に笑い、共に生きる『狂言教室』」が開催されます。初の共催となるこの催しを前に、横浜イノベーション推進機構 代表理事 黒澤 史津乃様へお話を伺いました。また、バナナ園グループ代表 矢野 達郎との対談も実現。多様な社会課題と地域づくりを語り合った内容をお届けします。 ※以下、敬称略
横浜イノベーション推進機構立ち上げの経緯と背景
黒澤 “ 家族に頼らずに老後や死を迎える” という選択肢も受け入れられる社会をつくりたい。⎯⎯⎯ そんな思いから、私は20年以上にわたり活動を続けてきました。特に“身寄りのない高齢者”の支援は、以前は見過ごされがちでしたが、横浜市と連携しながら現場で積み上げてきた経験が、今では国の政策にも反映されるようになってきています。横浜には多様な課題が共存しており、一つの視点からでは解決できません。だからこそ地域のリビングラボとして、産官学民の壁を超えた共創を実現する中間支援組織として、横浜イノベーション推進機構は立ち上がったのです。
ゼブラ企業と「イキイキ暮らす」社会の実現
黒澤 最近とくに感じているのは、「生きている限り、誰もが役割を持っていたい」「誰かとつながっていたい」という気持ちです。年齢や障害の有無に関係なく、“イキイキと暮らしたい”という願いは、すべての人に共通する思いです。それは、介護現場にいる高齢者も、働く職員も、地域で子育てをする保護者も同じ。だからこそ、仕組みや制度ではなく、人と人との関係性や環境づくりがとても大切だと思っています。
私たちは、“ゼブラ企業”という、社会課題の解決と持続可能な収益の両立をめざす企業群の在り方を重視しています。ユニコーンのような単独での急成長ではなく、地域に根ざしながら “群れ”で進む連携のかたちが本質です。その一環として、横浜市と連携し、青葉区では身寄りのない高齢者の終末期を支える『終身サポート支援モデル』を立ち上げ、福祉と暮らしのすき間を埋めるコーディネートを続けています。また、若者の市政参画を目的に、市会議員と高校生による対話企画を生徒会主導で実施し、“誰もがまちづくりの当事者”として関われる場づくりにも力を入れています。
こうした多層的な取り組みの先に、誰もが“イキイキ働き、ワクワク暮らす”社会が広がると信じています。バナナ園グループでは入居者様が働くモデルも試行されています。その理念は私たちの目指す方向性に合致していると感じていますので、これから一緒に取り組みを進めることを楽しみにしています。
黒澤 史津乃(くろさわ しずの)
横浜イノベーション推進機構 代表理事
株式会社OAGウェルビーR代表取締役。
行政書士・消費生活アドバイザー。
証券アナリストを経て、高齢者・障がい者の意思決定支援や後見、死後事務などに20年以上従事。著書に「家族に頼らないおひとりさまの終活」。厚労省事業や認知症関連会議の委員を務め、家族に頼らずとも幸せに生きられる社会づくりに尽力している。
伝統芸能が認知症ケアや地域理解のきっかけに
矢野 私たちが認知症の入居者様に“狂言教室”を体験していただく取り 組みを続けて15年になります。当初は高齢者が狂言の台詞を覚えられるのか、続けられるのか不安もありましたが、実際には皆さんが笑顔で楽しみ、むしろ“演じること”が感情や記憶に良い刺激を与えていると実感しています。また、ご家族や近隣の方々も気軽に参加していただくことで交流も生まれています。
黒澤 伝統芸能という一見ハードルの高いものが、実は認知症ケアや地域理解のきっかけになる。これはまさに“文化の力”だと思いますし、共生社会に向けた有効なアプローチの一つだと感じています。
教育と多世代共創:高校生・若者との連携の可能性
黒澤 子どもたちが“自分の将来”と“社会の未来”を重ねて考え、行動する機会はとても重要です。今後は、バナナ園グループが持つ現場のリアルな学びの場を、福祉教育や地域キャリアの場として共に発展させていけたらと考えています。
矢野 介護業界の魅力ややりがいが十分に伝わっていない今、私たちの 現場が高校生や大学生にとって新しい発見の場になれば嬉しいです。介護は「社会の役に立てる実感」が得られる仕事。そこに気づいてもら えるような取り組みを、ぜひ横浜イノベーション推進機構とともに進めたいです。
最後に:9月7日イベント「共に笑い、共に生きる『狂言教室』」とその先に向けて
黒澤 このイベントは、内閣府「多世代参画による地域活力プラットフォーム構築調査事業」のキックオフになります。狂言によって笑顔を引き出し、文化を通じて人と人をつなぐこのイベントに、多くの方が参画してくださることを期待しています。
矢野 この取り組みが、介護事業の枠を超えて、社会課題を解決する新たな“学び”や“連携”につながっていくことを願っています。そして職員一人ひとりが働くよろこびを感じ、それがまたご入居者様の笑顔に返っていく。バナナ園グループの行動指針「人と社会を幸せに導くことを本気で願う」を実勢し、好循環の始まりとなる日になることを心から楽しみにしています。