グループホームと老人ホームの違いとは?特徴や費用、選び方を分かりやすく解説します

グループホームと老人ホームの違いとは?特徴や費用、選び方を分かりやすく解説します

近年、高齢者向けの住まいの選択肢として「グループホーム」と「老人ホーム」という言葉をよく耳にするようになりました。しかし、これらの施設が具体的にどのように違うのか、どちらが自分や家族にとって最適なのか、迷われる方も多いのではないでしょうか。親御様の介護が必要になった際、あるいは将来に備えて情報収集を始める際に、それぞれの特徴を正しく理解しておくことは非常に重要です。

目次

グループホームと老人ホームの基本的な違いとは?

グループホームと老人ホームは、どちらも高齢者が生活する施設ですが、その目的や対象者、サービス内容には明確な違いがあります。まずは、それぞれの基本的な違いを把握し、全体像を理解することから始めましょう。

一目でわかる比較表で概要を把握する

グループホームと老人ホームの主な違いを以下の表にまとめました。

比較項目グループホーム老人ホーム(代表例:介護付き有料老人ホーム)
主な対象者認知症の診断を受けた要支援2以上の高齢者自立~要介護5の高齢者(施設により異なる)
目的認知症高齢者の共同生活を通じた症状緩和・自立支援高齢者の生活支援、介護、医療ケアなど多岐にわたる
ケアの専門性認知症ケアに特化施設により様々(介護、医療、リハビリなど)
居室タイプ個室が基本個室、相部屋など施設により異なる
雰囲気少人数で家庭的施設規模により様々(大規模なものから小規模なものまで)
所在地利用者の住所地と同じ市区町村内全国各地(施設の種類による制限あり)

グループホームは認知症ケアに特化した地域密着型サービス

グループホームは、正式名称を「認知症対応型共同生活介護」と言い、認知症の診断を受けた高齢者が専門的なケアを受けながら共同生活を送る施設です。
大きな特徴は、5人から9人程度の少人数ユニットで、家庭的な雰囲気の中で生活を共にし、スタッフの支援を受けながら食事の準備や掃除などの役割を分担することです。また、地域密着型サービスの一つであるため、原則として施設が所在する市区町村の住民のみが入居対象となります。

「グループホーム」とは?特徴を詳しく解説

グループホームがどのような施設なのか、もう少し詳しく見ていきましょう。認知症ケアに特化しているという点は先述の通りですが、その他にもグループホームならではの特徴がいくつかあります。

グループホームの定義と目的を理解する

グループホームは、介護保険法に基づいた地域密着型サービスの一つで、「認知症によって自立した生活が困難になった利用者に対して、家庭的な環境と地域住民との交流の下で、食事、入浴等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにする」ことを目的としています。
(出典:厚生労働省「認知症対応型共同生活介護」)つまり、単に介護を提供するだけでなく、認知症の方が穏やかに、そしてその人らしく生活できる環境を提供することに重きを置いているのです。
引用元:Microsoft PowerPoint – 06_認知症対応型共同生活介護

少人数制による家庭的な雰囲気の魅力

グループホームの最も大きな特徴の一つが、1ユニット5~9名という少人数制であることです。これにより、入居者同士やスタッフとの間に親密な関係が築きやすく、まるで家族のような温かい雰囲気の中で生活を送ることができます。大人数が苦手な方や、集団生活に馴染みにくいと感じる方にとっては、安心感を得やすい環境と言えるでしょう。また、スタッフの目が行き届きやすく、個別の状況に合わせたきめ細やかなケアが期待できる点も魅力です。

グループホームと老人ホームのサービス内容の違い

グループホームと老人ホームでは、提供されるサービスの内容にも違いがあります。特に介護の専門性や医療ケアの対応体制は、施設を選ぶ上で非常に重要なポイントとなります。ここでは、それぞれの施設で受けられるサービス内容について、具体的な違いを比較しながら解説します。

介護サービスの範囲と専門性の違い

グループホームの介護サービスは、認知症ケアに特化している点が最大の特徴です。日常生活の支援を通じて、認知症の症状の進行を緩やかにし、できる限り自立した生活を送れるようにサポートします。食事の準備や掃除などを入居者とスタッフが共同で行うことも、その一環です。

一方、老人ホームの介護サービスは、施設の種類によって大きく異なります。介護付き有料老人ホームでは、24時間体制で手厚い介護サービスが提供されますが、住宅型有料老人ホームやサ高住では、必要な介護サービスを外部から利用する形になります。特別養護老人ホームも手厚い介護が特徴ですが、介護老人保健施設はリハビリを通じた在宅復帰支援が中心となります。

リハビリテーションの提供状況の違い

グループホームでは、日常生活そのものがリハビリテーション(生活リハビリ)と捉えられており、専門の機能訓練指導員が必ずしも配置されているわけではありません。老人ホームでは、介護老人保健施設がリハビリテーションに特化した施設であり、理学療法士や作業療法士などの専門職が配置され、集中的なリハビリを受けることができます。

サービス項目グループホーム老人ホーム(種類による)
介護サービス認知症ケア中心、生活リハビリ介護付き:手厚い介護、住宅型:外部利用、特養:手厚い介護、老健:在宅復帰支援
医療ケア限定的、協力医療機関との連携介護付き・特養・老健:看護師配置、医療連携あり、住宅型・サ高住:外部利用
リハビリ生活リハビリ中心老健:専門職による集中的リハビリ、介護付き:機能訓練指導員配置の施設も
食事サービス共同調理または施設提供施設提供が一般的
生活支援日常生活全般の支援清掃、洗濯、買い物代行など(施設により範囲は異なる)
看取りケア対応可能な施設もあるが、医療体制により限界も介護付き・特養:対応可能な施設が多い、その他:施設による

グループホームと老人ホームの費用の違い

施設選びにおいて、費用は非常に重要な検討項目の一つです。グループホームと老人ホームでは、費用の構造や相場が異なります。入居時にかかる初期費用と、毎月かかる月額利用料について、それぞれの違いを理解しておきましょう。

初期費用(入居一時金など)の比較

グループホームでは、入居時に「入居一時金」や「保証金」といった初期費用が必要となる場合があります。老人ホームの場合も、施設の種類やグレードによって初期費用は大きく異なります。介護付き有料老人ホームでは、入居一時金が数百万~数千万円と高額になる施設もあれば、0円のプランを用意している施設もあります。

月額利用料の内訳と相場の比較

グループホームの月額利用料は、一般的に家賃、食費、水道光熱費、介護保険サービスの自己負担分(1割~3割)、その他の日常生活費(理美容代、おむつ代など)で構成されます。
老人ホームの月額利用料も、家賃相当額、管理費、食費、介護保険自己負担分、上乗せ介護費用(介護付き有料老人ホームの場合)、その他雑費などで構成されます。

グループホームのメリットを理解する

グループホームには、特に認知症の方にとって多くのメリットがあります。少人数制の家庭的な環境や専門的なケアは、認知症の方が安心して穏やかに暮らすために非常に有効です。ここでは、グループホームが持つ主なメリットについて具体的に解説します。

認知症の方にとって安心できる環境

グループホームは、認知症の方が混乱しにくいように配慮された環境設計がなされています また、使い慣れた家具を持ち込むことができたり、自分のペースで生活できたりするなど、自宅に近い環境で過ごせるように工夫されています。このような環境は、認知症の方にとって大きな安心感につながります。

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手厚い認知症ケアを受けられる安心感

グループホームのスタッフは、認知症ケアに関する専門的な知識と経験を持っています。そのため、認知症特有の症状(徘徊、物忘れ、不安など)に対して、適切な対応やコミュニケーションをとることができます。一人ひとりの状態をきめ細かく把握し、その人らしさを尊重したケアを提供してくれるため、ご本人もご家族も安心して任せられるでしょう。薬に頼るだけでなく、生活リハビリや回想法などを通じて、精神的な安定や症状の緩和を目指すケアが行われます。

グループホームのデメリットと注意点

多くのメリットがあるグループホームですが、一方でデメリットや注意しておきたい点も存在します。入居を検討する際には、これらの点も十分に理解し、ご本人やご家族の状況と照らし合わせて考えることが重要です。

入居対象者が限定される場合がある

グループホームの最大のデメリットの一つは、入居対象者が「認知症の診断を受けた要支援2以上の方」で、かつ「施設と同じ市区町村に住民票がある方」に限定される点です。認知症の診断がない方や、要介護度が低い方、あるいは他の市区町村にお住まいの方は原則として入居できません。また、人気の施設では空きがない場合も多く、すぐに入居できない可能性もあります。

医療ケア体制が充実していない施設もある

グループホームは、生活の場としての側面が強く、医療機関ではないため、看護師の配置が義務付けられていません。協力医療機関との連携はありますが、日常的に高度な医療処置が必要な方や、頻繁に体調が急変する可能性がある方にとっては、医療ケア体制が十分でない場合があります。病状が不安定な方や、特定の医療行為が欠かせない方は、入居前に施設の医療体制や受け入れ可能な範囲を詳細に確認する必要があります。

老人ホームのメリットを理解する

老人ホームは、その種類の多様さから、個々のニーズに合わせた幅広い選択肢があるのが大きなメリットです。医療体制の充実や豊富なレクリエーションなど、施設によって様々な強みがあります。ここでは、老人ホームが持つ主なメリットについて解説します。

多様な種類から状態や希望に合わせて選べる

老人ホームには、公的な施設から民間の施設まで、さまざまな種類があります。介護度や必要な医療ケア、予算、希望するライフスタイルなどに応じて、最適な施設を選びやすいのが大きなメリットです。
例えば、手厚い介護を希望するなら介護付き有料老人ホーム、リハビリに力を入れたいなら介護老人保健施設、比較的自由な生活を送りながらサポートを受けたいならサービス付き高齢者向け住宅など、選択肢が豊富です。

医療・看護体制が充実している施設が多い

特に介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などでは、看護師が24時間常駐していたり、日中だけでも配置されていたりする施設が多く、医療機関との連携も緊密です。
そのため、日常的な医療ケアが必要な方や、持病のある方、体調が不安定な方でも安心して生活できる環境が整っている場合があります。インスリン注射や経管栄養、喀痰吸引など、対応可能な医療行為の範囲も施設によって異なりますが、グループホームと比較すると医療面でのサポートは手厚い傾向にあります。

老人ホームのデメリットと注意点

多様な選択肢がある老人ホームですが、メリットばかりではありません。施設による差が大きい点や、集団生活における課題など、注意しておきたい点も存在します。これらのデメリットを理解した上で、慎重に施設を選ぶことが求められます。

施設によってサービスや費用に大きな差がある

老人ホームは種類が非常に多く、同じ種類の施設であっても、運営方針やスタッフの質、提供されるサービス内容、費用設定には大きな幅があります。
そのため、パンフレットやウェブサイトの情報だけでなく、実際に見学して比較検討することが不可欠です。安易に費用だけで選んでしまうと、必要なサービスが受けられなかったり、生活環境が合わなかったりする可能性があります。

大人数のため個別対応が難しい場合がある

特に規模の大きな老人ホームでは、多くの入居者が生活しているため、一人ひとりに対するきめ細やかな個別対応が難しい場合があります。
スタッフの人数に対して入居者の数が多くなると、どうしても対応が画一的になったり、個別の要望に応えるまでに時間がかかったりすることが考えられます。家庭的な雰囲気を重視する方や、手厚い個別ケアを希望する方にとっては、物足りなさを感じるかもしれません。

どちらを選ぶべき?グループホームと老人ホームの選び方のポイント

グループホームと老人ホーム、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解した上で、最終的にどちらの施設を選ぶべきか、迷われる方も多いでしょう。ここでは、ご本人やご家族にとって最適な施設を選ぶための具体的なポイントを解説します。これらのポイントを参考に、後悔のない施設選びを進めてください。

本人の心身の状態と必要なケアを明確にする

まず最も重要なのは、入居を検討しているご本人の現在の心身の状態(ADL:日常生活動作の自立度、IADL:手段的日常生活動作の自立度、既往歴、現在の病状など)と、どのようなケアが必要なのかを正確に把握することです。 例えば、認知症の症状がどの程度なのか、医療的なケア(経管栄養、インスリン注射、褥瘡ケアなど)がどの程度必要なのか、リハビリの必要性はどうかなどを具体的にリストアップしましょう。これにより、グループホームが適しているのか、あるいは特定の種類の老人ホームが適しているのかが見えてきます。

認知症の症状や進行度を考慮する

認知症の診断を受けている場合は、その症状の具体的な内容(記憶障害、見当識障害、徘徊、物忘れ、暴言・暴力など)や進行度合いを考慮することが非常に重要です。グループホームは認知症ケアに特化していますが、症状が非常に重度で集団生活が困難な場合や、医療依存度が高い場合は受け入れが難しいこともあります。
老人ホームでも認知症ケアに対応している施設はありますが、専門性や受け入れ可能な症状の範囲は施設によって異なります。主治医やケアマネージャーとよく相談し、適切な環境を選びましょう。

まとめ:本人にとって最適な施設選びのために

グループホームと老人ホームは、それぞれ異なる特徴と役割を持っています。認知症ケアに特化した家庭的な環境を求めるならグループホーム、より多様なニーズや医療ケアに対応できる選択肢を求めるなら老人ホームが考えられます。焦らず、じっくりと情報を集め、納得のいく施設選び

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