歌に合わせると、入居者さまの“自分から動きたい”につながる——音楽療法×バナトレ事業所で初の合同ミニイベント
「歌いながら身体を動かしたら、もっとバナトレの効果が出るかもしれない」
パーソナルトレーニングジムSP-Bodyのディレクターである太田藍さんの、そんな一言がきっかけでした。
2026年6月26日(金)、のんびりーす等々力で、音楽療法士の髙橋佐智代さんと太田さんによる「音楽療法×バナトレ」の合同ミニイベントを開催しました。日頃それぞれに実施している音楽療法とバナトレを、事業所内で一つのプログラムとして組み合わせるのは、今回が初めてです。
当日は入居者さまに加え、普段から交流のある町内の方やご家族、地域包括支援センターの職員にもご参加いただきました。施設内で行ってきた取り組みを、地域の皆さまとともに体験する機会となりました。
二つを一つの流れに組み込むことで、どのような変化が生まれたのか。当日の様子とともにご紹介します。
「歌ってから動く」流れで進めたセッション
ミニイベントは、髙橋さんが組み立てた「歌ってから、動く」という流れで進みました。まず、歌詞を見なくても口ずさめるような、なじみのある歌を歌い、そのあと同じ曲に合わせて身体を動かす。これを一曲ずつ、交互に繰り返していきます。

序盤は、『幸せなら手をたたこう』入居者さまからリクエストいただいた『有楽町で逢いましょう』をはじめとして、『あめふり』など、季節に合わせた歌も使用しました。声を出しながら、少しずつ身体をあたためていきます。
中盤は、歌に合わせたバナトレへ。『故郷』を口ずさみながら、椅子に浅く腰かけて背筋を伸ばし、立ち上がりや、お腹に力を込める運動へとつなげていきます。終盤は太鼓や鳴り物も加わって、テンポと強弱をつけた歌でひときわにぎやかに楽しんだ後、最後はゆったりとした曲で身体と呼吸を整えました。
歌と運動を別々に行うのではなく、一曲の中でつなげることで、参加者が次の動作へ移りやすい構成になっていました。

活動の前後には、一部の参加者を対象に、握力、立ち上がり動作の安定性、口腔機能の状態を確認しました。
今回はあくまで試行的な測定で、詳しい数値の扱いや、どのように評価していくかについては、今後さらに検討していきます。
楽しさや表情だけでなく、身体面の変化も確認することで、次の実践につなげるための材料にしていきます。


普段とは異なる声や動きが見られた
バナトレは、入居者さまの身体機能の維持・改善を目指し、普段から続けている運動プログラムです。
今回、そこに音楽療法を組み合わせることで、運動への入り方にいつもとは異なる変化が見られました。

『故郷』を口ずさむうちに声がだんだん大きくなり、それに合わせるように、身体の動きも大きくなっていく。表情がやわらぎ、椅子からの立ち上がりや、腹圧を意識した運動にも、汗ばむほどに自発的に取り組む姿が見られました。普段は参加してもあまり歌わない方が声を出して歌い、途中で集中がとぎれることのある方も笑顔で身体を動かしていました。
バナトレの動きに、なじみのある歌やリズムが加わることで、運動を始めるきっかけや、集中の続き方にも変化が生まれたように感じられました。
「音楽が入ると、身体がもっと動く」。太田さんと髙橋さんが実感した、掛け合わせの手応え
長年、音楽に合わせた有酸素運動を伝えてきた太田さんは、音楽を取り入れたことで、普段のバナトレよりも自然に運動強度が上がっていたと振り返ります。
「音楽が入ると、気持ちが乗って、身体がもっと動くんです。」
歌うことで自然と息を吐き続けられるため、呼吸を止めずに身体を動かしやすくなります。また、声を出すことや歌うことによる刺激は、自然と骨盤底筋群の運動にもつながるといいます。

髙橋さんは、普段の音楽療法とはまた異なる表情や反応に驚いたと話します。
「普段、音楽だけのときには見られない種類の笑顔がたくさんありました。声の大きさも、集中の続き方も、いつもとまるで違いましたね。歌と運動を一緒に行うことには、すごく意味があると感じています。」と、これからへの期待を語ってくださいました。
なじみのある歌による心地よい刺激が、身体を動かすきっかけになる。
そして、運動によって身体がほぐれ、整うことで、さらに声が出やすくなる。
今回のセッションでは、歌と運動が互いを促すような好循環が生まれていたと考えられます。

引き出されたのは「自分から動きたい」という気持ち
入居者さまがこれほど自然に動けた背景には、音楽が心と身体の両方に、同時にはたらきかけた可能性があります。
もちろん、一度の実践ですぐに身体機能が改善したと判断できるものではありません。一方で、なじみのある歌が、運動を始めたり、続けたりするきっかけになる可能性は感じられました。

若いころに口ずさんだ歌をもう一度歌うことで、その頃の感覚がよみがえる。歌をきっかけに声が出て、声やリズムに合わせて身体が動く。周囲の人と一緒に取り組むことで、さらに表情がやわらぐ。
特に印象的だったのは、運動量の変化だけではありませんでした。促されて身体を動かすのではなく、ご本人が自分から声を出し、動こうとする姿が見られました。心が動き、その動きに身体がついていく。
今回の実践は、ご本人の気持ちを起点に運動へつなげる方法を考える一歩になりました。

この一歩を日々のケアへ。そして11月、地域の皆さまへ
一度きりの催しで終わらせず、この日に見えたものを、日々のバナトレや「ふるさと体操」といった普段のケアの中へ少しずつ溶け込ませて、入居者さまの毎日に根づかせていきます。歌いながら、楽しみながら、自分から身体を動かす。その積み重ねが、身体機能の維持・改善を支えるものとなるよう、今後も実践を重ねていきます。
そして、事業所での実践から得られた気づきを、今年も地域の皆さまへ届けます。バナナ園グループではこれまでも、音楽と運動を通じて、楽しみながら認知症予防について考えるイベントを開催してきました。
今年も2026年11月20日(金)、川崎市総合福祉センター「エポックなかはら」にて、「運動と歌で認知症予防SHOW(名称仮)」を開催します。今回の合同セッションで見えた手応えも取り入れながら、より楽しみやすく、身体を動かしやすいプログラムを目指します。
詳しい内容や申込方法は、決まり次第あらためてお知らせします。

運動と歌で認知症予防SHOW(名称仮)
日時:2026年11月20日(金)
会場:川崎市総合福祉センター「エポックなかはら」大ホール
参加費:無料
今年もスペシャルライブを予定しています。
詳しいプログラムは、決まりしだいあらためてお知らせします。
ご家族やお近くの方とお誘い合わせのうえ、ぜひ足をお運びください。