介護施設の費用はいくら?種類別の相場と内訳、負担を抑える方法を解説
ご家族の介護が必要になったとき、多くの方が最初に直面するのが「費用は一体いくらかかるのだろう?」という不安です。介護施設の費用は、施設の種類や受けるサービス、ご本人の要介護度によって大きく変動し、その仕組みは非常に複雑です。しかし、事前に費用の全体像や内訳を正しく理解しておくことで、過度な不安を和らげ、ご家族にとって最適な施設選びを冷静に進めることができます。この記事では、介護施設の費用に関する基本的な知識から、種類別の相場、負担を軽減するための公的制度まで、分かりやすく解説していきます。
介護施設にかかる費用の全体像
介護施設の費用は、大きく分けて「初期費用」と「月額利用料」の2種類で構成されています。施設によっては初期費用が不要な場合もありますが、基本的にはこの二つの費用を念頭に置いて資金計画を立てることが重要です。

| 費用の種類 | 内容 | 備考 |
| 初期費用 | 主に「入居一時金」。施設の利用権を得るための費用 | 0円から数千万円まで幅広く、施設により償却期間が定められている |
| 月額利用料 | 毎月の施設利用にかかる費用 | 介護サービス費、居住費、食費、日常生活費などが含まれる |
参考:【一覧表でわかる】老人ホームの費用相場(種類別・都道府県別)|みんなの介護
初期費用(入居一時金)の役割
初期費用は、主に入居時に支払う「入居一時金」を指します。これは、その施設を終身にわたって利用する権利を得るための費用とお考えください。金額は0円から数千万円以上と施設によって極めて大きな差があります。一般的に、民間の施設、特にサービスが充実した都市部の施設ほど高額になる傾向があります。この入居一時金は、施設の定める期間で償却されるのが一般的です。例えば、償却期間が5年と定められている施設に3年で退去した場合、未償却分の一部が返還されることがあります。
参考:厚生労働省「有料老人ホームの現状と課題について」
参考:有料老人ホームの前払金に係る契約の問題に関する建議 : 消費者委員会 – 内閣府
毎月支払う月額利用料の内訳
月額利用料は、施設での生活を続けるために毎月必要となる費用です。この費用は、介護保険サービス費の自己負担分、家賃にあたる居住費、食費、そして光熱費やその他の雑費を含む日常生活費などで構成されています。これらの合計額が、毎月の基本的な支払い額となります。施設によっては、これらの基本料金以外に、理美容サービスや特別なレクリエーションへの参加費などが別途必要になる場合もありますので、契約前には必ず詳細を確認することが大切です。
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
参考:内閣府 経済財政諮問会議資料
【種類別】介護施設の費用相場

介護施設は、運営母体によって「公的施設」と「民間施設」に大別されます。どちらを選ぶかによって、費用体系やサービス内容が大きく異なりますので、それぞれの特徴と費用の相場を把握しておきましょう。
公的施設の費用相場と特徴
公的施設は、社会福祉法人や地方公共団体などが運営しており、費用が比較的安価なのが最大の魅力です。代表的な施設には「特別養護老人ホーム(特養)」や「介護老人保健施設(老健)」などがあります。初期費用は不要な場合が多く、月額利用料も所得に応じた負担軽減措置があるため、経済的な負担を抑えることができます。ただし、費用が安い分、入居希望者が非常に多く、申し込みから入居まで数ヶ月から数年単位で待機することも珍しくありません。
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
参考:介護サービスを受けられない…「介護難民」化はなぜ起こる? 事前にできる防止策も紹介|介護の教科書|みんなの介護
民間施設の費用相場と特徴
民間施設は、株式会社などの民間企業が運営する施設で、「介護付き有料老人ホーム」や「住宅型有料老人ホーム」などがこれにあたります。公的施設に比べて費用は高額になる傾向がありますが、その分、入居待機期間が比較的短く、施設ごとの特色が豊かです。例えば、リハビリ体制が充実している施設、医療ケアに強い施設、豪華な食事やレクリエーションを特色とする施設など、入居者のニーズに合わせた多様な選択肢があります。費用はサービス内容に比例するため、納得のいくサービスが受けられるかを慎重に見極める必要があります。
| 施設区分 | 代表的な施設 | 初期費用の相場 | 月額利用料の相場 | 特徴 |
| 公的施設 | 特別養護老人ホーム | 0円 | 約4万円~約15万円 | 費用が安いが待機期間が長い傾向がある |
| 公的施設 | 介護老人保健施設 | 0円 | 約8万円~約20万円 | 在宅復帰を目指すリハビリが中心となる |
| 民間施設 | 介護付き有料老人ホーム | 0円~数千万円 | 約15万円~約30万円 | 介護サービスが充実しており、多様な選択肢がある |
| 民間施設 | グループホーム | 0円~数千万円 | 約12万円~約20万円 | 認知症ケアに特化しており、少人数で共同生活を送る |
| 民間施設 | 住宅型有料老人ホーム | 0円~数百万円 | 約10万円~約25万円 | 生活支援が中心で、介護サービスは外部事業者と契約する |
【関連記事】【介護サービス種類まとめ】在宅・施設・地域密着型とは?内容を比較して解説します – 【公式】バナナ園グループ
月額利用料の4つの主な内訳

月額利用料がどのような費用で構成されているかを知ることは、費用の全体像を理解する上で非常に重要です。ここでは、主な4つの内訳について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
介護サービス費:介護保険が適用される費用
介護サービス費は、食事や入浴、排泄の介助といった介護サービスに対して支払う費用です。この費用には介護保険が適用され、利用者は所得に応じて費用の1割から3割を自己負担します。自己負担額は、要介護度が高くなるほど高くなりますが、月々の上限額が定められています。これを「介護報酬」と呼び、国によってサービスごとに単位数が決められており、全国どこでも公平な料金でサービスが受けられる仕組みになっています。
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
参考:厚生労働省 介護報酬の算定構造
居住費:施設の家賃にあたる費用
居住費は、施設の居室を利用するための費用で、一般の住宅における家賃に相当します。施設の立地や居室の広さ、設備の新しさなどによって金額が設定されています。多床室よりも個室の方が高額になるのが一般的です。公的施設である特別養護老人ホームなどでは、所得の低い方に対して居住費の負担を軽減する「負担限度額認定」という制度があります。
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
参考:厚生労働省 令和6年8月1日からの居住費負担限度額変更について
食費:施設で提供される食事の費用
居住費は、施設の居室を利用するための費用で、一般の住宅における家賃に相当します。施設の立地や居室の広さ、設備の新しさなどによって金額が設定されています。多床室よりも個室の方が高額になるのが一般的です。公的施設である特別養護老人ホームなどでは、所得の低い方に対して居住費の負担を軽減する「負担限度額認定」という制度があります。
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
参考:厚生労働省 令和6年8月1日からの居住費負担限度額変更について
食費:施設で提供される食事の費用
食費は、施設で提供される1日3食の食事にかかる費用です。多くの施設では、栄養バランスが考慮された献立が提供されます。治療の一環として特別な食事(療養食)が必要な場合、施設側には追加の費用や手間がかかりますが、「療養食加算」制度により保険給付でまかなわれるため、利用者に追加費用は請求されません。居住費と同様に、所得の低い方には食費の負担を軽減する制度が設けられています。
施設によっては、外食や出前などに対応してくれる場合もありますが、その際の費用は自己負担となります。
参考:療養食加算とは?算定要件や対象となる療養食などについて詳しく解説! | けあタスケル | 訪問介護、通所介護などのお役立ち情報・書式が満載
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
日常生活費:介護保険適用外の費用
日常生活費は、介護保険の適用対象外となる、個人の生活に必要な様々な費用を指します。具体的には、理美容代、個人用の日用品(歯ブラシ、化粧品、シャンプーなど)、個人の希望による特定のレクリエーション活動の材料費(習字、お花、絵画、刺繍等)、個人の買い物代行費用などが含まれます。ただし、おむつ代は介護保険の給付対象のため自己負担はありません。また、水道光熱費や電話代は日常生活費とは別に徴収される場合があります。一律に提供されるレクリエーション活動の費用は保険給付対象で自己負担はありません。
参考:・通所介護等における日常生活に要する費用の取扱いについて(◆平成12年03月30日老企第54号)
参考:【料金表あり】特養の費用はいくらかかる?自己負担額や居室タイプ別の違いを解説|みんなの介護
介護施設の費用を抑える3つの方法

介護費用は家計にとって大きな負担となり得ますが、国が設けている公的な制度を活用することで、その負担を軽減できる場合があります。ここでは、代表的な3つの制度についてご紹介します。これらの制度はご自身で申請しなければ適用されないため、内容をよく理解しておきましょう。
| 制度名称 | 制度の概要 | 主な対象費用 |
| 高額介護サービス費制度 | 1ヶ月の介護サービス費自己負担額が上限を超えた場合に、超過分が払い戻される | 介護サービス費の自己負担額 |
| 負担限度額認定 | 低所得者を対象に、居住費と食費の負担額に上限を設ける | 居住費、食費 |
| 医療費控除 | 支払った介護費用の一部を所得から控除し、税金の負担を軽減する | 施設サービス費、食費、居住費など(施設により異なる) |
高額介護サービス費制度を活用する
高額介護サービス費制度は、1ヶ月に支払った介護保険サービスの自己負担額が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた分の金額が払い戻される制度です。例えば、上限額が44,400円の方が、1ヶ月に50,000円の自己負担額を支払った場合、差額の5,600円が後から市区町村の窓口に申請することで支給されます。ただし、居住費や食費、日常生活費などはこの制度の対象外ですのでご注意ください。
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
参考:1.高額介護サービス費支給制度【MY介護の広場】
負担限度額認定を申請する
この制度は、主に所得の低い方を対象として、介護保険施設に入所した際の「居住費」と「食費」の負担を軽減するものです。市区町村に申請して「介護保険負担限度額認定証」の交付を受けることで、所得段階に応じた上限額までの負担に抑えることができます。特に、特別養護老人ホームなどの公的施設を利用する際には、月々の負担を大きく減らせる可能性があるため、対象となる場合は必ず申請しましょう。
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
参考:厚生労働省公式文書(令和6年改定資料)
医療費控除の対象になるか確認する
支払った介護費用の一部は、確定申告の際に医療費控除の対象となり、所得税や住民税が還付される可能性があります。例えば、特別養護老人ホームの利用料のうち、介護サービス費や食費、居住費の自己負担額の2分の1が医療費控除の対象となります。対象となる費用の範囲は施設の種類によって細かく定められています。年間の医療費と合わせて控除を申請できるか、施設の領収書などを保管し、確認することをおすすめします。
参考:No.1125 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価|国税庁
参考:No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価|国税庁
【ケース別】費用のシミュレーション

これまでに解説した内容を踏まえ、具体的なモデルケースで月々の費用がどのくらいになるのかをシミュレーションしてみましょう。あくまで一例であり、実際の費用は施設やお住まいの地域、個人の所得状況によって変動します。
ケース1:特別養護老人ホーム(要介護3)の場合
Aさんは要介護3の認定を受け、特別養護老人ホームの多床室に入所しました。世帯全員が市町村民税非課税で、負担限度額認定を受けていると仮定します。この場合、1ヶ月あたりの自己負担額は、介護サービス費と居住費、食費などを合わせて約9万円~10万円程度になることが見込まれます。公的施設の負担軽減措置が適用されることで、費用を大きく抑えることが可能です。
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
参考:【料金表あり】特養の費用はいくらかかる?自己負担額や居室タイプ別の違いを解説|みんなの介護
ケース2:介護付き有料老人ホーム(要介護2)の場合
Bさんは要介護2の認定を受け、都市部にある民間の介護付き有料老人ホーム(個室)に入所しました。入居一時金として400万円を支払い、月々の利用料を支払うケースを想定します。この場合、介護サービス費の自己負担分(要介護2の場合、1割負担で月額約18,270円)、家賃や管理費、食費などがかかります。合計の月額利用料は、約25万円程度になることが考えられます。これに加えて、日常生活で必要となる消耗品費などが別途かかります。
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
参考:【老人ホーム種類別・介護保険サービス利用料一覧】自己負担額をわかりやすく解説!|介護のコラム
ケース3:グループホーム(要介護2)の場合
Cさんは要介護2の認定を受け、グループホームに入所しました。入居一時金8万円を支払い、月額費用では、介護保険サービス費の自己負担分(1ユニットの場合で月額24,030円)となります。これに加えて日常生活費として賃料、食費、管理費、水道光熱費などで、合計月額約14万程度の費用がかかります。
参考:Microsoft PowerPoint – 06_認知症対応型共同生活介護
参考:【速報】認知症対応型共同生活介護 2024年度介護報酬改定単価 – ケアニュース by シルバー産業新聞|介護保険やシルバー市場の動向・展望など幅広い情報の専門新聞
【関連記事】:グループホームと老人ホームの違いとは?特徴や費用、選び方を分かりやすく解説します – 【公式】バナナ園グループ
まとめ
介護施設の費用は、一見すると複雑で分かりにくいものですが、その構造を一つひとつ紐解いていけば、決して理解できないものではありません。大切なのは、初期費用と月額利用料の全体像を掴み、公的施設と民間施設の違いを理解した上で、ご家族の経済状況とご本人の希望に合った施設を検討することです。ご紹介した費用を軽減するための制度も積極的に活用しながら、後悔のない施設選びを進めてください。