皆さん「狂言」をご存知ですか?そう、能や歌舞伎と同じ伝統芸能のひとつ。今回は嗜好を変え、「狂言」を今に伝える女性狂言師三宅藤九郎<みやけとうくろう>さんに赤坂の豊川稲荷内のお稽古場に伺い、お話を伺いました。(敬称略)
矢野:今回は「BANANA NEWS」のインタビューに快く応じていただきありがとうございます。まずは「狂言」のアウトラインについてお話いただけますか?
藤九郎:「狂言」が古典芸能、伝統芸能だと言うことはご存知だと思いますが、結構「遠い世界、ハードル高し!」って思われてるのじゃないでしょうか?でも数ある古典芸能の中で唯一の喜劇で、面白いこと滑稽なことを演じるわけですから、実際はすごく分かり易いんです。「食わず嫌い」の方が多いのがとっても残念です。
矢野:私もそんな食わず嫌いの一人かもしれません<笑>。
藤九郎:成立は室町時代。登場人物は、そのころの「大名」や「太郎冠者」(召使のこと)等ですが、いつの時代にも通じる普遍的なお話(狂言では曲と言います)を演じ、最後は必ず笑いで丸く収まるのです。しかも一曲が短い(15分程度)!型や伝統は大切に守られていますが、けっして堅苦しいものではないですし、それに新作では「シェイクスピア狂言」もあるのですよ。
矢野:ところで初心者にとっての楽しみ方のポイントってなんでしょうか?室町時代の言葉で演じられるわけで、一般人にも理解できるものでしょうか?
藤九郎:まずは、喜劇なので面白いと思うところで笑ってください! 室町時代の言葉が使われますが、特殊な役職や地名などを除けば結構理解できますし、演者の仕草や表情をあわせて見ていただけば、ストーリーは勿論、笑いのツボまで分かる筈です。外国での公演でも笑いの起きる場面は不思議と一致します。洋楽のコンサートでも言葉は分からなくても楽しめたり、歌の内容は伝わりますよね?狂言の言葉や装束は昔のものですが、「こういう事は今もある!」「こういう人は今もいる!」と楽しめるし、まずは狂言師や舞台のかもし出す雰囲気を「肌で感じて」欲しいですね。
藤九郎:説明だけでは分かり辛いですよね?狂言には名乗りと言って、自己紹介のセリフがあります。これをやってみましょう。「この辺りの者でござる」、矢野さんも一緒にどうぞ。しっかり「張った」声で抑揚や、高さだけでなく、姿勢や呼吸も真似てみてください。そう、「狂言」にマニュアルや教科書はありません、全て「口伝<くでん>」。セリフも動きも師匠を真似ることで覚えていくんです。
藤九郎/矢野:「こォ~のあ~たり~の~もォのでござる~」
矢野:姿勢を正して声を出すって、気持ちいいですね。アドレナリンの分泌を促し元気にしてくれる感じがします。お腹にも力が入りダイエットにもなりそうです。
藤九郎:ダイエットは(?)ですが、しっかり息を吸って、大きな口をあけ、発声するといい表情になります。それに狂言は見て、聞いていただくだけで「元気」が伝わる芸能なんですよ。
矢野:今日は少しですがライヴに接して感激です、ところで藤九郎さん、これまでに実際どなたかの介護をされたり、係わられたりした経験はおありですか?
藤九郎:幸か不幸か?自分で介護をしたことはありません。祖父は90歳まで存命だったのですが、84歳からは一切舞台
に立たなくなりました。それは「自分で納得の行く舞台が勤められない。」という理由からです。芸術家で、完璧主義。そんな祖父の介護を私の母がしていましたが、そういう本人の意思や考えを如何に家族を含め介護に携わる人間が理解をしてあげるかが重要と感じました。
矢野:介護にとって重要な「共感」ですね。さて、最後になりますが、舞台にかける「おもい」と今後の豊富を聞かせてください。
藤九郎:今日の舞台は昨日にも明日にも無い、だからいつもそのときの「100%を尽くすように」と師匠から教わってきました。狂言を通じて“日本の文化”を伝える、という責任もありますが、何より600年、人から人へ、心から心へ真直ぐに伝えられてきた狂言だからこそ「真直ぐにその日のベストをお見せする」事が大切と考えます。そうすることにより初めて、お客様に「元気」や「勇気」そして「笑い」を伝える事が出来ると思います。狂言の世界を一人でも多くの皆さんに伝えていきたい、今後は高齢者施設や老人クラブ等でもパフォーマンスしたいって考えています。
矢野:バナナ園でも是非お願いいたします。今日はお忙しい中本当に有難うございました。
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■弟は和泉元彌さん(二十世宗家)、姉は和泉淳子さん(史上初の女性狂言師)。実父で師匠は和泉元秀(十九世宗家)、祖父は九世三宅藤九郎<ともに人間国宝:故人>。宗家と姉が着々と家庭を築くのを横目に、サッカー、太極拳、ビーチバレー、写経、と挑戦(?)中。
<スケジュール>      
■12月21日、「クリスマス狂言ライブ(ディナーショー形式)」ホテルグランドヒル市ヶ谷にて、午後7時開演
※お問い合わせは藤九郎さんのHPでどうぞ
■インタビュアー:矢野達郎(当社理事長)