Abdominal pain of young woman, gynecological or medical problems concept

数年前から世界中で注目を集めている「フェムケア」。フェムケアは、本来全ての女性にとって必要なケアにも関わらず、生理痛や更年期といった課題に対するケアとして認知されており、高齢者へのケアとしてはあまり話題になっていません。バナナ園グループは、高齢者へのアプローチとして確立すべく、いち早く介護の現場にフェムケアを取り入れています。この記事を通じて、フェムケアが女性の生活にどれだけ大きな影響を与えるか、そして私たちの取り組みが介護業界にどのような変革をもたらす可能性があるのかをお伝えします。

見過ごされがちな高齢女性のフェムケア

フェムケアとは、女性のライフステージにおける「月経」「妊活」「妊娠・産後」「更年期」などをサポートするケアのことです。この分野への関心が高まった背景には、生理痛やPMS(月経前症候群)、育児、介護などにより、女性が社会で十分に活躍できていない現状や、少子高齢化による労働人口の減少が背景に挙げられます。「女性だから仕方がない」「我慢すればいい」とされてきた、女性の健康課題に対する解決策や選択肢を増やしてくれるものとして、近年注目されている分野です。

人生100年時代を迎え、健康寿命を延ばし高齢者のQOL(Quality of Life=生活の質)を向上させることが重要となる今、フェムケアはその要素の大切な一つ。しかし、高齢女性のフェムケアに対する社会的な関心はいまだに低いのが現状です。特に知られていないと感じるのは、高齢者に起こってしまう「臓器脱」。子宮、膀胱、直腸といった骨盤内の臓器が下がってしまい、陰部から外に出てくる女性特有の病気です。トイレが近い・尿漏れ・排尿や排便にも支障をきたし、重症になると常に飛び出た状態に。歩行に支障が出るなど、生活の質を下げる原因になってしまいます。このような症状はケアで予防・改善することが可能ですが、今の介護業界では、これらの問題に対する認識や対策、知識が欠けていると感じています。

男性にも効果的!月経コンディショニングを含んだ「バナトレ」

バナナ園グループが実施している独自のパーソナルトーレーニング「バナトレ」は、フェムケアを導入したプログラムで 、女性特有の悩みに対する月経コンディショニングを要素として含んでいます。しかしこのプログラムは女性に限って効果的な内容ではありません。入居者である認知症高齢者の骨盤底筋群を強化し、尿意、尿漏れ、骨盤臓器脱を予防するための運動を提供しています。さらに、パーソナルトレーニングジム「SP-Body」との共同開発により、お一人おひとりの健康状態に合わせた個別のプログラムを叶えています。

バナトレの効果は顕著に出ており、入居者さまの中には日常生活に必要不可欠であった紙パンツから、普通のパンツへと戻ることができた方もいらっしゃいます。介護度も、「要介護3」から「要介護1」へと大幅に改善されました。この変化の大きな要因は“姿勢”にあり、正しい骨盤底筋群の位置が保たれることで機能が向上したと考えられます。これは男性の入居者さまの事例。フェムケアを含んだバナトレは、ジェンダーを問わず多くの入居者さまにポジティブな変化をもたらしています。
このような明らかな改善を目の当たりにすると、私たち職員も大きなやりがいを感じます。入居者さまが笑顔で日々を過ごせる姿を見るたび、チーム全体の士気が向上し、さらに質の高いケアを目指して一丸となっています。

介護現場でフェムケアを取り入れる必要性

介護現場にフェムケアを導入することは、入居者さまの生活の質を上げると同時に、職員の負担軽減や介護の質の向上にも繋がると考えています。
特に排泄ケアは、非常に繊細な配慮が求められる領域であり、これまであまり話題にされなかった重要な課題です。バナナ園グループではこの問題に真摯に向き合い、入居者さま一人ひとりの尊厳を守ることに力を注いでいます。

排泄の問題は、誰にとってもプライベートなことであり、介護を受ける方々にとっては、このケアが上手くいかないと、恥ずかしさや自尊心の低下を感じることがあります。これが精神的な不安定を引き起こし、場合によっては日々の生活意欲を低減させる原因にもなりかねません。介護現場でフェムケアが適切に行われることで、入居者さまに安心感を提供することができます。
また、フェムケアによって体の変化に気づきやすくなり、大きな病気につながる前に対応することができます。こうしたことから、全体の医療費の節約にも繋がり得るとも考えています。

チームケアで介護業界を変えていく

我々は介護業界におけるフェムケアの必要性を強く感じておりますが、今の介護業界には広まっていないのが現状です。SP-Bodyのトレーナーで月経コンディショニングの考案者でもある太田さんも「フェムケアに注力している介護施設はバナナ園グループの他には見たことがない。そもそも重要性に気付いていない印象で、講習会で臓器脱の話をしても、介護士さんが知らないということも多いです。」と述べています。
バナナ園グループはSP-Bodyとチームで協力し、フェムケアの普及に積極的に取り組んでおります。これにより、持続可能な介護環境の実現と、全ての高齢者が尊厳を持って生活できる社会を目指しています。
私たちの活動が、より多くの施設や組織に影響を与えられるよう、引き続き努めて参ります。

おすすめ記事