2024年、バナナ園グループは第8期「かわさき健幸福寿プロジェクト」において5事業所で金賞を獲得するという快挙を成し遂げました。このプロジェクトは、要介護度の改善や日常生活動作(ADL)の維持に取り組む介護施設を評価し、高齢者の生活の質を向上させることを目的とした川崎市の支援プログラムです。第2バナナ園に入居している小山征子様は、1年間で要介護度を2段階改善し、その成果が評価され金賞を受賞。8月に開催された授賞式では川崎市長から直接表彰されました。今回の記事では、小山様が金賞を受賞するに至った裏側のストーリーと、第2バナナ園での日々の取り組みについて詳しくご紹介します。


1年間で「要介護度3」から「要介護度1」へ

写真:小山征子

小山様が第2バナナ園に入居したのは2023年10月。それまではひとり暮らしをされていましたが、脳梗塞を患い入院を経験。その後、歩行が不十分となり、これまでのように生活することが難しくなりました。特に自宅の段差や動線が不便で、自分で火を使うことに不安を感じ、安全で安心できる生活を求めて、ご本人がグループホームへの入居を希望されました。入居当初の小山様は「要介護度3」の認定を受けており、歩行器を使わなければ自立して歩くことが難しく、認知症の進行も見られました。第2バナナ園管理者の雛形由美さんによると、「初めは慣れない様子でしたが、小山様の元々の明るい人柄もあって次第に環境に慣れ、他の入居者さんや職員と積極的に交流するようになりました。その結果、表情もどんどん明るくなっていきました」とのことです。わずか1年で、認知症のある方が2段階も要介護度を改善するというのは驚くべき成果です。

目覚ましい改善の鍵となったチームケア

写真:第2バナナ園内の水耕栽培

小山様の要介護度が「要介護3」から「要介護1」へと大きく改善した背景には、第2バナナ園でのチームケアと、小山様自身の積極的な取り組みがあります。それに加えてバナナ園グループでは、入居者さまの生活の質を向上させるために、音楽療法や狂言教室、水耕栽培など、外部のプロフェッショナルと連携した多様な活動を提供しています。これらも小山さんにとっても大きな刺激となり、積極的に参加することが要介護度改善の一助となったと考えられます。
特に音楽療法は、小山様が最も楽しんでいる活動の一つ。音楽を通じてリラックスし、他の入居者さまと一緒に歌ったり演奏を楽しむことで、認知機能の刺激や感情の表現が促進されました。また、バナナ園グループ独自のパーソナルトレーニングプログラム「バナトレ」も要介護度改善に大きな役割を果たしています。小山様の場合は特に、かかとの上げ下げによって足首の柔軟性を高め、むくみを防ぐことで歩行の安定性を高めています。テレビを見ながらでもこの動作を続けるなど、日常生活にも取り入れたことが、小山様の健康維持に非常に有効でした。

写真:第2バナナ園管理者 雛形 由美さん

それでも、完全に歩行器を手放すことはまだ難しく、時折自信をなくして歩行器に頼る姿も見られます。そんな時は職員が「ここまでは歩行器なしで歩いてみましょう」と優しく声掛けをし、小山様を励ましています。そのおかげで少しずつ自信を積み重ね、歩行器を使わずに歩く姿も増えてきています。「征子ちゃん頑張れ!」と自分に励ましの言葉をかけながら歩く姿は非常に愛おしく、職員たちにとっても大きな喜びとなっています。

要介護度改善を支えた第2バナナ園の環境

写真:第2バナナ園のすぐ近くにある小倉神社

歩行の改善は、単に身体的な向上にとどまらず、入居者さまの生活の充実感にもつながります。小山様にとって、月に一度開催される小倉神社の朝市への参加はそのひとつです。朝市では多くの人が集まるため、歩行器を使用しながらの参加となりますが、賑やかな雰囲気を楽しんだり、くじ引きでの鉢植えの交換に参加するなど、地域の行事が小山様の日常に喜びをもたらしています。歩行の安定は、小山様の世界を広げ、新たなチャレンジや楽しみを見つけるきっかけとなっているように感じています。第2バナナ園は、地域行事に積極的に関わることで、入居者が「地域の一員」としての社会との繋がりを感じられるよう支援しています。

写真:洗濯物を畳む小山

また、第2バナナ園ならではの特徴について雛形さんに伺うと、「特に気を使わず、家庭的な雰囲気作りを大切にしている。第2バナナ園はチームワークを大切にしているためが良いため、アットホームな感じが入居者さんにも伝わって、穏やかな日々を過ごしてもらえていると思います」と話してくれました。このような環境もあってか、小山様は他の入居者さまのお世話や職員のお手伝いを率先して行ってくれています。認知症が進行すると、多くの人は他人への関心が薄れがちですが、小山様は他の入居者さまを気遣ってトイレまで付き添う、洗濯物をたたむなど、他人のために行動することに喜びを感じておられるようです。さらに、月はじめに行っている習字や、第2バナナ園で飼っている猫リリちゃんとの触れ合いも、家庭的でアットホームな環境づくりの一環となっています。

写真:第2バナナ園で飼っている猫リリちゃん(アニマルセラピー)

写真:事業所内に飾っている習字

「かわさき健幸福寿プロジェクト」での金賞受賞を受けて

写真:「かわさき健幸福寿プロジェクト」授賞式の様子

今回の金賞受賞は、第2バナナ園にとって大きな励みであり、職員全員にとって誇らしい出来事となりました。雛形さんは「第2バナナ園だけでなく、バナナ園全体で金賞を取れたことが本当に誇らしい」と喜びを語り、これからも個々にあったケアを継続していきたいと考えています。
また、小山様の娘さんからも感謝の声をいただいています。バナナ園グループのX(旧Twitter)で母親の楽しそうな姿を見ては「母が元気に過ごしている様子に安心します」と喜び、授賞式に参加して市長から直接表彰された際には「母と一緒に会場に行き、素晴らしい体験ができて本当に嬉しかった」と感激されていました。こうした家族からのフィードバックは、職員全体のモチベーションを高める大きな力となっています。
小山様の1年間での変化は、「人と人との繋がり」や「個々に合わせた適切なサポート」「アットホームな環境」が要介護度の改善に大きな影響を与えることができた事例となりました。バナナ園グループは、今後も地域社会との繋がりを大切にしながら、新しい取り組みを積極的に導入し、入居者さま一人ひとりに寄り添う質の高いケアを提供し続けます。

おすすめ記事