嫌がる親を施設に入れるには?説得の5つの手順と親の本音を解説
親御さんの介護に日々向き合う中で、「このまま在宅で介護を続けるのは難しいかもしれない」と感じる瞬間は少なくありません。しかし、いざ施設入居の話を切り出すと、「絶対に嫌だ」「家から出たくない」と強く拒否され、途方に暮れてしまう方は多くいらっしゃいます。
親を想うからこそ悩むこの問題は、決してあなた一人だけの悩みではありません。大切なのは、親御さんの気持ちを理解し、正しい手順で話し合いを進めることです。この記事では、施設入居を嫌がる親御さんを円満に説得するための具体的なステップや、知っておくべきリスクについて詳しく解説します。
なぜ親は施設への入居を嫌がるのか?4つの本音

親御さんが施設入居を拒否する背景には、単純な「わがまま」ではなく、様々な不安や本音が隠されています。まずは、その気持ちに寄り添うことから始めましょう。
住み慣れた自宅や地域から離れたくない
長年暮らしてきた家は、思い出がたくさん詰まった、何よりも安心できる場所です。家具の配置から近所の風景、顔なじみの人々との関係まで、そのすべてが親御さんのアイデンティティの一部となっています。その環境を離れ、全く新しい場所で生活を始めることへの抵抗感は、私たちが想像する以上に大きいものです。
家族に見捨てられるという孤独感や不安
施設への入居を勧められると、「家族に迷惑をかけている」「厄介者だと思われている」「見捨てられてしまう」といった寂しさや疎外感を抱いてしまうことがあります。 特に、「介護は家族がするもの」という価値観を持つ世代にとっては、他人の世話になることへの抵抗感と相まって、深い孤独を感じてしまうのです。
施設での集団生活に抵抗がある
老人ホームや介護施設に対して、「自由がなく、プライバシーもない」「知らない人と共同生活なんて窮屈だ」といったネガティブなイメージを持っている方も少なくありません。 自分のペースで生活してきた方にとって、食事や入浴の時間が決まっていたり、集団でのレクリエーションに参加したりすることへの抵抗感は当然のことと言えるでしょう。
「まだ大丈夫」というプライドと現状認識のズレ
ご自身では「まだ介護など必要ない」「自分のことは自分でできる」と思っていても、客観的に見ると介助が必要な場面が増えていることはよくあります。身体的な能力の衰えをご本人が自覚することは難しく、介護の必要性を指摘されることがプライドを傷つけ、「まだ大丈夫だ」と意固地になってしまうケースも見られます。
親の同意なしで施設に入れることはできる?
話し合いが平行線をたどると、「本人の同意がなくても入居させられないのか」という考えが頭をよぎるかもしれません。法律的な観点から解説します。
原則として本人の同意(自己決定権の尊重)が必要
日本の憲法では、すべての国民に「自分の生活について自分で決める権利(自己決定権)」が保障されています。そのため、本人の判断能力が十分にあるにもかかわらず、その意思に反して無理やり施設に入居させることは、自己決定権の侵害にあたる可能性があります。 強引な入居は、親御さんに大きな精神的苦痛を与え、かえって心身の状態を悪化させるリスクもあります。
判断能力が低下している場合は家族の判断も
一方で、認知症などが進行し、ご自身で物事を正しく判断する能力が著しく低下している場合は、例外的な対応が考えられます。在宅生活を続けることで生命や身体に危険が及ぶ可能性があると判断される場合には、医師やケアマネジャーなど専門家の意見を踏まえた上で、ご家族が代理で契約手続きを進めることもあります。ただし、この場合でも本人の尊厳を最大限に尊重する姿勢が重要です。
嫌がる親を説得するための5つのステップ
親御さんを説得するには、焦らず、段階を踏んで丁寧に進めることが不可欠です。お互いが納得できるゴールを目指すための、具体的な5つのステップを紹介します。

| ステップ | ポイント | 具体的な声かけの例 |
| 1. 傾聴と共感 | 相手の意見を否定せず、まずは「なぜ嫌なのか」をとことん聞く。 | 「施設に入るのは嫌なんだね。どんなところが不安に思う?」 |
| 2. 現状と想いを伝える | 感情的にならず、客観的な事実(介護の現状)と心配する気持ちを正直に話す。 | 「最近、夜中に何度も起きるから、お母さんの体が心配で。」 |
| 3. ポジティブなイメージ作り | パンフレットやウェブサイトを見せ、施設での楽しい生活を具体的に想像させる。 | 「この施設、温泉があるんだって。一緒に行ってみない?」 |
| 4. 段階的に慣れる | ショートステイなどを利用し、「お試し」で施設の雰囲気やスタッフに触れてもらう。 | 「旅行気分で、一泊だけ泊まってみるのはどうかな?」 |
| 5. 第三者の力を借りる | ケアマネジャーや医師など、親が信頼する専門家から話してもらう。 | 「先生からも、一度お話を聞いてみようか。」 |
ステップ1:まずは親の気持ちを傾聴し共感する
老人ホームに対する古い、あるいはネガティブなイメージを払拭することが重要です。 最近の施設は、ホテルのように綺麗で、レクリエーションや食事が充実しているところも少なくありません。パンフレットを一緒に眺めたり、施設のウェブサイトを見たりして、「ここでは趣味の園芸が続けられるみたいだよ」「栄養バランスの取れた温かいご飯が毎日食べられるのはいいね」など、施設での明るい生活を具体的にイメージできるよう手伝いましょう。
ステップ2:介護の現状と家族の想いを正直に伝える
親御さんの気持ちを受け止めた上で、今度はあなたの気持ちを伝えます。ただし、「こっちも限界なの!」と感情的に訴えるのは逆効果です。「夜中に何度も起きてしまうので、あなたの体が心配」「火の元が心配で、仕事に集中できない」など、介護の具体的な現状と、親を大切に想うからこその心配事を率直に、そして冷静に伝えましょう。
ステップ3:施設でのポジティブな生活をイメージしてもらう

老人ホームに対する古い、あるいはネガティブなイメージを払拭することが重要です。 最近の施設は、ホテルのように綺麗で、レクリエーションや食事が充実しているところも少なくありません。パンフレットを一緒に眺めたり、施設のウェブサイトを見たりして、「ここでは趣味の園芸が続けられるみたいだよ」「栄養バランスの取れた温かいご飯が毎日食べられるのはいいね」など、施設での明るい生活を具体的にイメージできるよう手伝いましょう。
ステップ4:ショートステイなどで施設に少しずつ慣れてもらう
いきなり「入居」を目指すのではなく、まずは短い期間から施設に慣れてもらうのも有効な方法です。 数日間施設に宿泊できる「ショートステイ」を利用すれば、施設の雰囲気やスタッフ、他の入居者との関わりを実際に体験できます。「まずは一泊だけお試しで」と提案し、ハードルを下げることで、受け入れてもらいやすくなります。
ステップ5:専門家など第三者の力を借りる
家族間の話し合いでは、どうしても感情的になりがちです。そんな時は、第三者の視点を入れると、事態が好転することがあります。 いつもお世話になっているケアマネジャーや、かかりつけの医師など、親御さんが信頼を寄せている専門家に相談し、同席してもらったり、客観的な立場から施設入居の必要性を説明してもらったりしましょう。
このまま在宅介護を続ける3つのリスク

親御さんの気持ちを尊重したいと思う一方で、在宅介護を続けることのリスクから目を背けることはできません。万が一の事態に陥る前に、起こりうるリスクを理解しておくことも重要です。
介護離職による経済的な困窮
介護に費やす時間が増えることで、仕事を時短せざるを得なくなったり、最終的には退職(介護離職)に至ったりするケースは少なくありません。主たる収入源を失うことは、家計に深刻なダメージを与え、経済的な困窮につながる可能性があります。
介護者の心身の疲弊と「共倒れ」の危険
終わりの見えない介護は、介護者の身体だけでなく心にも大きな負担をかけます。睡眠不足やストレスが続けば、介護者自身が心身のバランスを崩し、いわゆる「共倒れ」の状態に陥ってしまう危険性があります。
ストレスによる不適切な関わりや虐待への発展
精神的に追い詰められると、本人にそのつもりがなくても、親御さんに対してきつい言葉をかけてしまったり、必要なケアを怠ってしまったりと、不適切な関わりにつながることがあります。最悪の場合、それが虐待へと発展するリスクもゼロではありません。
親も納得!後悔しない施設選びの4つのポイント
説得がうまくいき、親御さんが施設探しに前向きになったら、次はいよいよ施設選びです。親御さん自身が「ここなら良いかも」と思える場所を見つけることが、円満な入居への鍵となります。
本人の希望や性格に合った施設を選ぶ
これまでの生活スタイルや趣味、性格などを考慮し、親御さんが自分らしく過ごせる環境の施設を選びましょう。例えば、社交的な方ならレクリエーションが豊富な施設、静かに過ごしたい方なら個室のプライベート空間が確保されている施設などが考えられます。
複数の施設を見学し比較検討する
パンフレットの情報だけでなく、必ず複数の施設を一緒に見学しましょう。施設の清潔感や明るさ、スタッフの対応、入居者の表情などを自分の目で確かめることが重要です。 本人が見学に参加することで、「自分で選んだ」という納得感にもつながります。
費用の計画を具体的に立てる
施設への入居には、入居一時金や月額利用料など、まとまった費用がかかります。親御さんの年金や貯蓄でどのくらい賄えるのか、家族の援助はどの程度可能なのかを具体的に計算し、無理のない資金計画を立てましょう。
家族が面会に行きやすい場所を選ぶ
施設に入居した後も、家族とのつながりは親御さんにとって大きな心の支えです。「見捨てられた」という不安を解消するためにも、家族が定期的に面会に行きやすい立地の施設を選ぶことは、非常に大切なポイントです。
まとめ
親御さんが施設への入居を嫌がるのは、変化への不安や孤独感など、もっともな理由があるからです。大切なのは、その気持ちを頭ごなしに否定せず、まずはじっくりと耳を傾け、共感することです。
そして、焦らず、今回ご紹介した5つのステップに沿って、根気強く対話を重ねていきましょう。あなたの「いつまでも元気でいてほしい」という愛情が伝われば、きっと親御さんの固い心も少しずつ和らいでいくはずです。
この問題は、ご家族だけで抱え込む必要はありません。ケアマネジャーなどの専門家にも相談しながら、親御さんとあなた自身にとって、最も幸せな選択肢を見つけてください。
