認知症かも?母親との会話が通じないときにできる優しい対話術を解説

認知症かも?母親との会話が通じないときにできる優しい対話術を解説

最近、お母様との会話で「あれ?」と思う瞬間が増えていませんか。「何度も同じ話をする」「話が噛み合わない」「どうしてこんなことを言うのだろう…」。そんな時、ふと「もしかして認知症なのでは?」という不安がよぎり、どう接すれば良いのか分からなくなってしまう方は少なくありません。大切なお母様だからこそ、話が通じないことへの戸惑いや寂しさ、そしてご自身の心の負担も大きくなっていることでしょう。

この記事では、お母様とのコミュニケーションに悩むあなたのために、話が通じない原因から、今日から実践できる具体的な対話のコツ、そしてご家族自身の心を守るためのヒントまで、分かりやすく解説します。

母親と「話が通じない」と感じる…これって認知症?

お母様との会話が成り立たないと感じる時、多くの人が認知症を心配します。しかし、話が通じにくくなる原因は一つではありません。まずは、加齢による自然な変化と病的な症状の違いを正しく理解することが、冷静な第一歩となります。

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まずは知っておきたい「加齢による物忘れ」と「認知症」の違い

誰でも年齢を重ねると、物忘れをすることが増えます。しかし、加齢による自然な物忘れと、認知症による「記憶障害」は異なります。両者の違いを理解しておくことが大切です。

項目加齢による物忘れ認知症による記憶障害
忘れる範囲体験したことの一部 (例:昨日の夕食のおかず)体験したことの全て (例:夕食を食べたこと自体)
自覚の有無忘れたことへの自覚がある忘れたことへの自覚がないことが多い
探し出す力ヒントがあれば思い出せるヒントがあっても思い出せない
日常生活への影響大きな支障はない支障が出てくる (例:約束を忘れる、物の管理ができない)
症状の進行ゆっくり、または進行しない時間とともに進行していく

加齢による物忘れは、脳の生理的な老化現象です。一方で、認知症は脳の細胞が壊れることによって起こる病気であり、進行すると日常生活に様々な支障をきたします。

参考:厚生労働省:政策レポート(認知症を理解する)

もしかして?家庭でできる認知症の初期症状チェックリスト

認知症のサインは、物忘れ以外にも現れます。以下のような変化が見られないか、お母様の普段の様子を優しく見守ってみましょう。

  • 時間や場所が分からなくなることがある(今日の日付が言えない、慣れた道で迷う)
  • 今までできていた家事や作業の段取りが悪くなった(料理の味付けがおかしい、手順を間違える)
  • 財布や鍵など、大切なものを頻繁になくすようになった
  • 「誰かが盗んだ」など、人を責めるような言動が増えた
  • 以前よりも怒りっぽくなったり、逆に意欲がなくなったりした
  • 服装に無頓着になったり、同じ服を何日も着たりする

これらの項目に複数当てはまる場合は、一度専門家へ相談することを検討しても良いかもしれません。


参考:知っておきたい認知症の基本 | 政府広報オンライン 

話が通じにくくなる認知症以外の原因

話が通じない原因が、認知症ではなく他の要因である可能性も考えられます。例えば、加齢による難聴で、そもそも会話が正確に聞き取れていないケースです。また、体調不良や服用している薬の副作用、あるいは孤独感などによるうつ症状が、コミュニケーション能力に影響を与えることもあります。決めつける前に、様々な可能性を視野に入れることが大切です。

参考:MCIハンドブック

   第14回 薬剤性の認知機能障害について|相模原市認知症疾患医療センター

   高齢者のうつについて

なぜ?認知症の母親と話が通じなくなる仕組み

認知症になると、脳の機能が低下することで、コミュニケーションに必要な様々な能力が損なわれていきます。話が通じなくなる背景には、認知症特有の「中核症状」が関係しています。

【関連記事】認知症予防につなげる音楽の力 3選! – 【公式】バナナ園グループ

参考:認知症の中核症状 | 健康長寿ネット

新しいことを記憶するのが難しくなる「記憶障害」

認知症の代表的な症状が記憶障害です。特に、新しい出来事を記憶に留めておくことが難しくなります。そのため、数分前に話した内容や約束をすっかり忘れてしまい、「まだご飯を食べていない」「そんな話は聞いていない」といった言動につながります。ご本人にとっては、忘れているという自覚がないため、悪気があって言っているわけではありません。

状況を正しく認識できない「見当識障害」

時間、場所、人物などを正しく認識する能力を「見当識」と呼びます。見当識障害が起こると、今がいつなのか、ここがどこなのか、目の前にいるのが誰なのかが分からなくなります。例えば、自分の娘に向かって「あなたは誰ですか?」と言ったり、真夏に「もうすぐお正月だね」と言ったりすることがあります。自分の置かれている状況が分からないため、会話が噛み合わなくなってしまうのです。

物事を順序立てて考えられない「実行機能障害」

実行機能とは、目的を達成するために計画を立て、段取り良く実行していく能力のことです。この機能が障害されると、一度に複数のことを考えたり、効率的に作業を進めたりすることが難しくなります。「着替えて、歯を磨いて、朝ごはんを」と伝えても、何をどの順番でやれば良いのか混乱してしまうのです。その結果、周りからは指示を聞いていないように見えてしまうことがあります。

今日から実践できる!認知症の母親との優しい対話術

お母様が安心して話せるように、少しだけコミュニケーションの方法を工夫してみましょう。大切なのは、お母様の世界観を尊重し、寄り添う気持ちです。

ポイント1:まずは「傾聴」と「共感」の姿勢を大切にする

話の内容が事実と違っていても、まずはお母様の言葉に真摯に耳を傾けましょう。「そうなんだね」「大変だったね」と、気持ちに寄り添う相槌を打つことが大切です。たとえ話が理解できなくても、「あなたの話を聞いていますよ」という姿勢が伝わるだけで、お母様の不安は和らぎます。

ポイント2:頭ごなしに否定せず、一度話を受け入れる

「それは違うでしょ」「さっきも言ったじゃない」といった否定的な言葉は、お母様を混乱させ、プライドを傷つけてしまいます。厚生労働省も指摘するように、認知症の方は何も分からなくなったわけではなく、誰よりも不安で悲しい思いを抱えています。まずは「そう思っているんだね」と一度話を受け止め、安心感を与えてあげることが、穏やかな対話への第一歩です。


参考:認知症の人と接するときの心がまえ|厚生労働省 

ポイント3:短く、具体的で分かりやすい言葉を選ぶ

一度にたくさんの情報を伝えようとすると、混乱を招きます。国立長寿医療研究センターの情報にもあるように、「あれ」「それ」といった指示語は避け、「お茶を飲みましょう」「上着を着ましょう」など、一つの文に一つの用件だけを込めて、短くはっきりと具体的に伝えることを心がけましょう。


参考:認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント~ | 国立長寿医療研究センター 

ポイント4:表情やジェスチャーも使って伝える

言葉だけでなく、非言語的なコミュニケーションも非常に重要です。穏やかな表情で、目線を合わせて話すことを意識してください。例えば、「こちらへどうぞ」と声をかける時に、そっと手を差し伸べる、うなずきながら話を聞くといったジェスチャーを加えることで、言葉だけでは伝わりにくい意図や感情を補うことができます。

ポイント5:穏やかな気持ちで、相手のペースに合わせる

認知症の方は、考えたり話したりするのに時間がかかることがあります。焦らせたり、返事を急かしたりせず、お母様のペースに合わせましょう。沈黙が続いても、辛抱強く待つ姿勢が大切です。ご家族がゆったりと構えることで、お母様も落ち着いてコミュニケーションをとることができます。

やってはいけない!母親との関係を悪化させるNG対応

良かれと思ってした対応が、逆にお母様を追い詰め、症状を悪化させてしまうこともあります。以下のような対応は避けるようにしましょう。

感情的に叱ったり、間違いを厳しく問い詰めたりする

物忘れや失敗に対して、「どうしてできないの!」と感情的に叱るのは最も避けたい対応です。お母様は叱られた理由を忘れてしまっても、「叱られた」という嫌な感情だけは心に残り、あなたに対して不信感や恐怖心を抱いてしまう可能性があります。

一度にたくさんの情報を伝えたり、急かしたりする

「早くして!」と急かす言葉は、お母様に大きなプレッシャーを与えます。焦れば焦るほど、頭が混乱してしまい、かえって行動できなくなってしまいます。時間に余裕を持ったスケジュールを心がけ、ゆったりとした気持ちで接することが大切です。

「なぜ分からないの?」と論理的に説得しようとする

認知症の方に対して、正論や理屈で説得しようとしても、残念ながら通じません。脳の機能障害が原因であるため、「なぜ分からないのか」を本人が一番分からず、苦しんでいます。事実を突きつけて間違いを正そうとすることは、お母様の自尊心を傷つけ、心を閉ざす原因になります。


参考:認知症の人と接するときの心がまえ|厚生労働省 

一人で抱え込まないで。家族自身の心を守るために

お母様のケアは、ご家族、特に中心となって介護するあなたの心身の健康があってこそ成り立ちます。決して一人で全てを背負い込まず、自分自身を大切にすることを忘れないでください。

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完璧な介護を目指さない

「しっかりしなければ」「私が頑張らないと」と自分を追い詰めていませんか。100点満点の介護を目指す必要はありません。少し手を抜くくらいの気持ちで、「今日はこれだけできれば十分」と考えるようにしましょう。ご自身の頑張りを認め、時には自分を褒めてあげてください。

介護サービスなどを活用して自分の時間を作る

デイサービスやショートステイといった介護保険サービスを利用し、お母様と少し距離を置く時間を作ることは、決して悪いことではありません。介護から離れてリフレッシュする時間は、あなたの心を軽くし、また優しい気持ちでお母様に接するための大切なエネルギー補給になります。

同じ悩みを持つ人や専門家に気持ちを打ち明ける

介護の悩みは、一人で抱え込んでいるとますます深刻になります。友人や他の家族、あるいは地域包括支援センターの専門家などに、今の辛い気持ちを話してみましょう。言葉にするだけでも、心が整理され、楽になることがあります。同じ境遇の人々が集まる家族会などに参加し、情報交換をするのも良いでしょう。


参考:(リンク2)地域包括支援センターの概要 

どこに相談すればいい?認知症に関する公的な相談窓口

「もしかして?」と感じたら、専門機関に相談することが、問題解決への最も確実な近道です。一人で悩まず、専門家の力を借りましょう。

まずは身近な「かかりつけ医」へ

長年お母様の健康状態を把握しているかかりつけ医は、最初の相談相手として最適です。身体全体の健康状態を考慮した上で、適切なアドバイスや専門医療機関への紹介をしてくれるでしょう。

地域の総合相談窓口「地域包括支援センター」

地域包括支援センターは、高齢者の保健・福祉・医療に関する総合相談窓口で、全国の市町村に設置されています。保健師や社会福祉士などの専門家が、無料で相談に応じてくれます。認知症に関する悩みだけでなく、介護保険サービスの利用方法など、幅広くサポートしてくれます。

参考:地域包括支援センターについて

認知症専門の「認知症疾患医療センター」

都道府県や指定都市が指定する専門の医療機関です。認知症の鑑別診断や治療方針の決定、専門的な医療相談などを行っています。かかりつけ医からの紹介状があるとスムーズです。

参考:主な認知症施策について |厚生労働省

まとめ

お母様との話が通じず、戸惑いや不安を感じるのは、あなたが真剣にお母様と向き合っている証拠です。大切なのは、認知症という病気の特性を理解し、お母様を否定せず、その心に寄り添うことです。

今回ご紹介した対話のコツを少しずつ試しながら、ご自身の心も大切にしてください。そして、決して一人で抱え込まず、専門機関のサポートを活用しながら、お母様との穏やかな時間を守っていきましょう。

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