老老介護とは?その現状と問題点、共倒れを防ぐための相談先や利用できるサービスを解説
ご自身の親や配偶者の介護について、考え始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。もし介護する側もされる側も高齢である場合、それは「老老介護」と呼ばれ、多くの課題を抱えています。自分自身の体力も衰えてくる中で、介護を一人で抱え込むことには限界があります。
この記事では、老老介護の基本的な知識から、その負担を軽減するための具体的な方法まで、分かりやすく解説します。決して一人で悩まず、利用できるサポートを知ることから始めましょう。
老老介護とは?基本的な定義と現状
近年、ニュースなどでも耳にする機会が増えた「老老介護」という言葉ですが、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。まずはその定義と、日本の現状について確認していきましょう。
65歳以上が介護する「老老介護」の定義
老老介護とは、介護をする人(介護者)と介護を受ける人(被介護者)が、ともに65歳以上の高齢者である状態を指します。夫婦間での介護だけでなく、高齢になった子どもがさらに高齢の親を介護するケースや、兄弟姉妹間で支え合うケースなど、その形はさまざまです。また、介護者と被介護者がともに75歳以上である場合は「超老老介護」と呼ばれ、より深刻な問題を抱えやすいとされています。
データで見る老老介護の割合と実態

老老介護は、もはや特別な家庭環境ではなく、非常に一般的なものになっています。厚生労働省の2022年の調査によると、在宅介護を行っている世帯のうち、介護者と要介護者がともに65歳以上である「老老介護」の世帯は、全体の63.5%にも上ります。 これは、在宅介護の半数以上が老老介護であることを示しており、日本の高齢化社会における重要な課題となっています。
特に深刻化する「認認介護」の問題

老老介護の中でも特に深刻なのが「認認介護」です。これは、認知症の高齢者が、同じく認知症の高齢者を介護する状態を指します。 認知症の症状により、薬の管理ができなかったり、食事を摂ったことを忘れてしまったり、火の不始末が起きやすくなるなど、命に関わる危険性が高まります。お互いに助けを求める判断が難しくなるため、社会から孤立しやすく、問題が表面化しにくいという特徴も持っています。
なぜ老老介護は増えているのか?その背景にある3つの要因

どうしてこれほどまでに老老介護は増加しているのでしょうか。その背景には、日本の社会構造の変化が深く関わっています。
平均寿命は延びても健康寿命との差が埋まらない現実
老老介護が増加している最も大きな要因は、日本人の平均寿命が延び続けていることです。しかし、寿命が延びる一方で、介護などの助けを必要とせずに自立して生活できる期間を示す「健康寿命」との間には、男性で約8.5年、女性で約11.6年の差があります。この差の期間は、何らかの介護が必要になる可能性が高いことを意味しており、結果として高齢者が高齢者を介護する期間が長くなっています。
参考:健康日本21アクション支援システム Webサイト
参考:02.資料1ー1健康寿命の令和4年値について
核家族化による高齢者のみ世帯の増加
かつては三世代が同居する家庭も珍しくありませんでしたが、現代では子どもが独立して親とは別に暮らす「核家族」が主流です。これにより、高齢の夫婦のみ、あるいは一人暮らしの高齢者世帯が増加しました。いざ介護が必要になったときに、若い世代の力を借りにくい環境が、老老介護につながる一因となっています。
介護サービス利用をためらう経済的な事情
介護保険サービスなどを利用すれば介護の負担は軽減できますが、もちろん費用がかかります。年金収入だけでは費用の捻出が難しく、経済的な余裕がないために、介護サービスを十分に利用できない世帯も少なくありません。 「他人に迷惑をかけたくない」という思いや、家族に頼ることに抵抗を感じる心理も相まって、結果的に家族内での介護を選ばざるを得ない状況が生まれています。
見過ごせない老老介護の深刻なリスク

老老介護は、介護する側とされる側の双方にとって、多くのリスクをはらんでいます。どのような問題点があるのかを具体的に知っておくことで、早めの対策につながります。
介護者の心身を蝕む過大な負担と「共倒れ」
介護は、食事や排泄、入浴の介助など、想像以上に体力を消耗します。介護者自身も高齢で体力が衰えているため、腰痛など身体の不調をきたしやすくなります。また、24時間気が休まらない生活は、精神的にも大きなストレスとなります。こうした負担が積み重なることで、介護者が先に倒れてしまう「共倒れ」のリスクが非常に高くなります。
社会からの孤立が招く情報不足と精神的な落ち込み
介護に追われる日々が続くと、趣味の時間や友人との交流が減り、次第に社会から孤立しがちになります。社会との接点が失われると、利用できる公的サービスなどの有益な情報が耳に入りにくくなるだけでなく、気分転換の機会もなくなります。その結果、介護者がうつ状態に陥ったり、認知症を発症したりするケースも少なくありません。
介護疲れが引き起こす虐待や介護放棄
追い詰められた状況が続くと、残念ながら高齢者虐待や介護放棄(ネグレクト)といった深刻な事態に発展することもあります。「もう介護したくない」という気持ちと「自分がやらなければ」という責任感の間で葛藤し、精神的に限界を迎えてしまうのです。これは決して他人事ではなく、誰にでも起こりうる問題です。
一人で抱え込まない!老老介護の負担を軽くする具体的な方法

老老介護の負担は、決して一人で抱え込む必要はありません。公的・民間のさまざまなサービスを上手に活用することで、心身の負担を大きく軽減することができます。
最初のステップは専門家へ相談すること
介護の悩みや不安を、まずは誰かに話すことが大切です。特に、介護の専門知識を持つ人に相談することで、的確なアドバイスや利用できるサービスの情報を提供してもらえます。後述する「地域包括支援センター」などの公的な窓口は、無料で相談に乗ってくれる心強い味方です。
介護保険サービスを最大限に活用する
要支援・要介護認定を受けることで、介護保険サービスを原則1割~3割の自己負担で利用できます。ヘルパーが自宅を訪問してくれる「訪問介護」や、日帰りで施設に通う「デイサービス」など、さまざまなサービスがあります。これらを組み合わせることで、介護者の負担を大きく減らすことが可能です。
民間のサービスや配食、見守りなども検討する
介護保険外の民間サービスも充実しています。例えば、栄養バランスの取れた食事を届けてくれる配食サービスや、緊急時にボタン一つで通報できる見守りサービスなどです。これらは、日々の生活の質を維持し、介護者の負担を軽減する上で非常に役立ちます。
悩んだらまずここへ!無料で相談できる公的窓口

いざ相談しようと思っても、どこに行けばいいか分からないという方も多いでしょう。ここでは、無料で利用できる主な公的相談窓口を紹介します。まずは電話一本でも構いませんので、連絡してみることをお勧めします。
| 相談窓口 | 主な役割 | こんな時に相談 |
| 地域包括支援センター | 高齢者の介護、福祉、健康、医療など様々な相談に対応する総合窓口 | 介護に関する全般的な悩み、何をどこに相談すればいいか分からない時 |
| 市区町村の高齢者福祉担当窓口 | 介護保険の申請受付や、自治体独自の高齢者向けサービスの案内を行う | 介護保険の手続きや、具体的なサービス内容について知りたい時 |
| 病院の相談室 | 医療ソーシャルワーカーが在籍し、退院後の生活や医療、福祉制度の相談に乗る | 病気や怪我で入院し、退院後の在宅介護に不安がある時 |
あなたの町の介護のよろず相談所「地域包括支援センター」
地域包括支援センターは、高齢者の生活を総合的に支えるための拠点です。 保健師や社会福祉士、ケアマネジャーといった専門職が配置されており、「介護について何から始めたらいいかわからない」といった初期の段階から、具体的なサービス利用の調整まで、幅広く相談に乗ってくれます。各市区町村に設置されているので、まずはお住まいの地域のセンターを探してみましょう。
市区町村の高齢者福祉担当窓口
お住まいの市区町村の役所には、必ず高齢者の福祉に関する専門の窓口(名称は自治体により異なります)があります。介護保険の要介護認定の申請手続きは、この窓口で行います。また、自治体が独自に行っている高齢者向けの支援サービスなどについても情報を得ることができます。
参考:サービス利用までの流れ | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
医療に関する相談もできる病院の相談室
かかりつけの病院や入院先の病院には、「医療相談室」や「地域連携室」といった名称の相談窓口が設置されていることがほとんどです。医療ソーシャルワーカーなどの専門家が、退院後の生活や在宅医療、介護保険サービスの利用についてのアドバイスをしてくれます。
参考:病院の地域連携室とは?役割や仕事内容、職種についても解説 | 株式会社ソラスト
参考:医療福祉相談室 | インタビュー ~部署、働く環境~ | 春日部中央総合病院
在宅介護を支える主な介護保険サービス

介護保険を利用することで、多様なサービスを組み合わせて在宅での生活を続けることが可能になります。ここでは代表的なサービスを3つ紹介します。
【関連記事】在宅介護とは?サービスの種類から費用、始め方までわかりやすく解説します – 【公式】バナナ園グループ
自宅に来てもらう「訪問介護」
訪問介護は、ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事や入浴、排泄の介助といった「身体介護」や、掃除、洗濯、調理などの「生活援助」を行ってくれるサービスです。 介護者が苦手なことや、負担に感じていることを専門家の手に委ねることで、精神的な余裕が生まれます。
施設に通って交流もできる「デイサービス」
デイサービス(通所介護)は、日中に施設へ通い、食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどのサービスを受けられるものです。 要介護者にとっては、他者と交流し、心身機能の維持を図る良い機会になります。また、その間、介護者は休息を取ったり、自分の用事を済ませたりと、リフレッシュの時間を持つことができます。
介護者が休息をとれる「ショートステイ」
ショートステイ(短期入所生活介護)は、介護施設に短期間宿泊し、24時間体制で介護を受けられるサービスです。 介護者の体調が悪い時や、冠婚葬祭、旅行などで一時的に家を空ける必要がある場合に非常に役立ちます。介護者の休息(レスパイトケア)目的での利用も推奨されています。
【関連記事】ショートステイとは?介護の負担を軽くする使い方や料金、利用条件を分かりやすく解説 – 【公式】バナナ園グループ
これからのために。介護者が心掛けておきたいこと

老老介護を乗り越えるためには、サービスを利用するだけでなく、介護者自身の心構えも大切になります。最後に、無理なく介護を続けるための3つのポイントをお伝えします。
完璧な介護を目指さず自分を責めない
「自分がしっかりしなければ」と責任を背負いすぎると、精神的に追い詰められてしまいます。すべてを完璧にこなそうとせず、「今日はここまでできれば十分」と考えるようにしましょう。うまくいかないことがあっても、決して自分を責めないでください。手を抜くこと、誰かに頼ることは、介護を長く続けるために必要なことです。
自分のための時間を作り健康を維持する
介護者自身の心と体の健康が、良い介護につながります。デイサービスなどを利用して意識的に自分のための時間を作り、趣味や散歩、友人との会話など、好きなことをしてリフレッシュしましょう。また、自分自身の健康診断も忘れずに受けるなど、体調管理にも気を配ることが重要です。
元気なうちから家族と介護について話し合う
介護が必要になってから慌てないように、まだ元気なうちから、将来について家族で話し合っておくことが大切です。「もし介護が必要になったら、どこで、どのように暮らしたいか」「どのような支援を受けたいか」といった本人(被介護者)の希望を事前に確認しておきましょう。また、子どもたちなど、他の親族に協力を求められる点はないかについても、早めに相談しておくことが望ましいです。
まとめ
老老介護は、高齢化が進む日本において、誰もが直面しうる身近な問題です。介護者も被介護者も高齢であるため、共倒れや社会的孤立といった深刻なリスクを抱えています。しかし、その負担は決して一人で背負うものではありません。
大切なのは、問題を正しく理解し、地域包括支援センターなどの専門機関に早めに相談することです。介護保険サービスなどを上手に活用しながら、介護者自身の健康と生活も大切にしてください。この記事が、あなたの不安を少しでも和らげる一助となれば幸いです。
