川崎市を中心とした10箇所に介護グループホームを展開するバナナ園グループでは、認知症高齢者に向けたパーソナルトレーニング「バナトレ」を、武蔵小杉・新丸子に店舗を構えるパーソナルトレージングジムSP-Bodyと共同開発しました。運動学をもとに考案されたバナトレは全事業所で取り入れられており、実際に介護度が下がった入居者さまがいるほど効果を発揮しております。
今回は、毎週事業所にて実際にバナトレを実施していただいているSP-Bodyのトレーナー:太田藍さんに、「バナトレが効果を発揮できる理由」についてお話を伺いました。


【ご紹介】SP-Body ディレクター 太田 藍さん

1999年よりスポーツクラブに勤務。在籍中はヨガやアクアビクスの教育を担当する。その後、「よりお客さまに寄り添ったトレーニングを実施したい」という想いからパーソナルトレーナーに移行。ダイエット目的の一般の方からソフトボールの実業団選手まで、幅広い方のパーソナルトレーニングを担当されています。
また、月経周期が及ぼす影響をケアするSP-Body独自開発のトレーニング『月経コンディショニング』の考案者であり、出産経験のある高齢者の約4割が発症すると言われている臓器脱のケアとして必要と考え、バナトレにも『月経コンディショニング』を取り入れている。

バナトレが大切にしていること

── バナトレは、どういったプログラムのトレーニングですか?

> 太田 藍さん
人間の身体は、関節が良いポジションにないと動きません。バナトレは、関節を良いポジションに戻して正しく動かせるようになることを目指したパーソナルトレーニングです。その中で大切にしているのは脊柱の動き。人間の動きの要になるので、脊柱を正しく動かせるようになることを一番に目指しています。

── 具体的に、どういった動きがプログラムに盛り込まれていますか?

> 太田 藍さん
例えば、聴き慣れ親しんでいる「故郷(ふるさと)」の曲に合わせて、まずは側屈動作、続けて回旋動作、屈曲・伸展、最後に挙上動作をトレーニングすることで、すべての脊柱の動きを網羅させています。ただ、私が伺う週1回だけでは時間が足らないので、施設の職員さんたちにも協力をいただき、日々トレーニングを実施してもらっています。

── 介護の現場のトレーニングは、職員さんたちとのチームワークが大切なんですね。

> 太田 藍さん
チームワークとても重要です!バナナ園グループの職員さんたちはバナトレの研修を何度も受けてくださっていて、その内容をしっかりと実践いただいています。その甲斐もあって、関節が動かせるようになっていく入居者さんたちも大勢いらっしゃるんだなと感じています。

認知症の方へのトレーニングアプローチ

── 介護の現場・認知症の方へのトレーニングは、効果を出すためのアプローチ方法に特徴はありますか?

> 太田 藍さん
最初は何が必要なのかを考えていたんですけど、結局は他の方々と同じなんだと気がつきました。効果をあげるためには、どんな方が相手でも信頼関係が必要だということを、25年間指導してきて一番感じているところです。どの技術を入れるとか最新のエクササイズを取り入れるとか、そういったことではなくて、入居者さまとのコミュニケーションと信頼関係があるからこそ効果が出ると考えています。

── コミュニケーションを取るのが難しい方とは、どうやって信頼関係を構築しますか?

> 太田 藍さん
コミュニケーションというのは、言葉のやり取りだけではありません。私たちトレーナーは身体の触れ方にものすごく気を使います。足の持ち上げを1つとっても、その触れ方次第で入居者さまの動きも変わるので、熱意を持って触れているとその想いも伝わっていくんじゃないかなと思っています。

── 触るだけで身体の仕組みがわかるんですね!

> 太田 藍さん
私たちは、機能解剖学と理学療法士の先生から年に数回講習を受けるようにしていて、身体の仕組みについて研究をしています。例えば、車椅子生活が長くて全然動かなくなってしまうと、身体の筋緊張がひどくなり自分でも動かせないと諦めてしまう。そしてさらに硬直してしまう悪循環が発生します。その方に対しても、身体の仕組みを理解して関節を正しい位置に戻してあげるだけで緩むことがあります。
身体の状態を把握するだけではなく、ふと触れる中で苦しさを少し改善させてあげられれば、入居者さまも安心して身を任せていただけると考えています。

介護業界のトレーニングの重要性について

── 介護業界におけるトレーニングの重要性について教えてください。

> 太田 藍さん
知り合いの高齢者の方が、バナナ園さんとは違う介護施設に入居していました。入居当初は歩けていたものの、3ヶ月後には歩けなくなってしまうまでに悪化をしていました…。テレビばっかりを観させていて、身体を動かさなかったため関節が固まってしまったんです。
その方がバナナ園生田の泉に転居してバナトレを始めたんですけど、パーソナルトレーナーだったり職員さんのケアが功を奏し、みるみるうちに筋肉が弛緩していきました。全く伸びなかった膝が今では伸びるようになり、表情も柔らかくっていきました。身体が動かない・動かせないと気持ちの面でも固く閉ざされていってしまうので、トレーニングで動かしていくことは介護業界においての重要性を強く感じています。

── 最後に、バナナ園グループの印象はいかがでしょうか?

> 太田 藍さん
とにかく、手厚いんですよね。私の祖母は別のグループホームにも居たんですが、まず建物に入った時の匂いが気になっていました。バナナ園グループさんはそれが本当に無いんです。それって、施設全体を清潔に保っているし入居者さまの身体もいつも綺麗にしているってことだと思うんです。入居者さまは人生の大先輩として敬意を持って、普段から本当に愛情をかけて熱心に接していると感じています。
私たちトレーナーだけの力では、時間的にどうしても足らない部分がありますが、こういった職員さんたちがいるからこそ、トレーニングも成果を発揮できているんだと考えています。
そういった環境をチームで作っているバナナ園グループさんに、私も将来、認知症になったらこの施設に入りたいです。

まとめ

バナナ園グループでは、今回の太田さんのインタビューを通して、認知高齢者に向けたパーソナルトレーニング「バナトレ」と、プロフェッショナルとのチームケアの大切さを再認識いたしました。職員はもちろん、地域や他業界のプロフェッショナルとの連携は、今後も強化していきたいと考えています。
太田さんは、介護業界では珍しいフェムケア・月経コンディショニングにも精通しており、バナナ園グループに取り入れてくださっています。その内容についても、別の記事にてご紹介できればと考えています!

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