川崎市を中心にグループホームを運営するバナナ園グループでは、認知症ケアの新たな試みとして、各事業所内に水耕栽培を導入しています。この取り組みは、入居者さまの生活の質(QOL)向上を図るものです。本記事では、バナナ園グループが水耕栽培を導入するに至った背景、装置の特徴、期待される効果、そして今後の展望について詳しく紹介します。

介護施設における水耕栽培の導入背景

バナナ園グループは、入居者さまに「明るく・楽しく・自由に」過ごしていただくための新たな福祉サービスを模索する中で、東京大学と共同開発していたプランツラボラトリーの声掛けをきっかけに、屋内農場システム「PUTFARM」に注目しました。水耕栽培装置であるPUTFARMの導入にあたって、当初は課題も多くありましたが、介護現場での活用を目指してプランツラボラトリーとの連携を強化してまいりました。
新型コロナウイルス感染症の流行による外出制限に加えて、災害級の酷暑の影響で入居者さまの身体活動が制限される中、室内で楽しめる活動の提供が急務となったことも状況を後押しし、事業所内の限られたスペースにも設置できるよう、ハーフサイズの栽培ラックも開発して頂きました。はじめは2〜3カ所で試験導入をし、その後全事業所へ導入。入居者さまに新たな喜びと活動の機会を提供しています。

プランツラボラトリーと「PUTFARM」の特徴

「人と植物と地球のみらいを考える」をスローガンに掲げるプランツラボラトリーは、植物工場に関する研究・開発およびコンサルティングを行う企業です。同社が提供している省エネ型屋内農場システム「PUTFARM」は、堆肥液と水とLEDの光だけでレタスなどを育てることができ、敷地の広さや屋内・屋外を問うことなくさまざまな場所に設置できるというもの。さらに、従来の植物工場の1/2~1/3の費用で設置でき、独自の遮熱方式によりランニングコストも大幅に削減できます。
バナナ園グループに導入した水耕栽培装置は、従来の「PUTFARM」よりもさらに40%小型化され、設置場所の柔軟性とエネルギー効率の向上に特化しています。農薬を使用せず室内での栽培が可能なため、年間を通じて安定した作物の供給が可能です。介護施設での利用を考慮し、操作が簡単で、日常的なメンテナンスも容易に行えるよう設計されています。

認知症高齢者に期待される効果と実際の効果

バナナ園グループでは、水耕栽培の導入は「園芸療法」と同様の効果が期待できると考えています。園芸療法とは、植物の世話を通じて心理的および身体的な健康を向上させる治療法です。自分で育てることで自尊心や充実感が生まれ、継続的な関心と責任感を提供します。施設内に設置することで入居者さまは自分の居住空間内で植物の成長を観察したり、収穫することが可能となっています。

導入から約1年が経過し、入居者さまの生活に多くのメリットが表れていると感じています。職員からも「野菜の成長を見るために、よく立ち上がるようになった」「コミュニケーションが活発になり笑顔も増えた」と好評です。また、栽培や収穫の作業は身体活動を促し、筋力維持やADL(日常生活動作)の向上につながっています。さらに、収穫した野菜は近隣にお住まいの地域の方や、施設を訪れる方へのお裾分けにも使われ、地域社会とのつながりを深めています。

バナナ園グループにおけるチームケアの強化と今後の展望

バナナ園グループは、入居者さまに最適なケアを提供するため、多職種連携によるチームケアの強化に力を入れています。水耕栽培の導入もその一環であり、プランツラボラトリーとの協力により実現しました。チームケアによる介護は、包括的なケアの提供を可能にするだけでなく、職員の知識やスキルの向上にも寄与し、これが介護の質の向上にも繋がると考えています。
バナナ園グループは、これからも様々な分野のプロフェッショナルとのチームケアを強化し、入居者さまが笑顔で過ごせるように、革新的なケアの提供に挑戦し続けます。そして、川崎市にとどまらず、介護業界全体の質の向上に貢献することを目指します。

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